# 損益通算とは何か
損益通算は、利益と損失を一定の範囲で相殺する仕組み
損益通算とは、ある所得で出た損失を、別の所得や利益と一定のルールに従って相殺する仕組みです。初心者向けにいうと、「利益が出たもの」と「損失が出たもの」を税金計算上で差し引きし、課税される利益を調整する考え方です。
たとえば、株式投資でA銘柄を売って利益が出た一方、B銘柄を売って損失が出た場合、一定の条件のもとで利益と損失を差し引いて税金を計算できることがあります。このような場面で、損益通算という言葉が出てきます。
ただし、損益通算は「どんな損失でも自由に使える制度」ではありません。株式投資の譲渡損失、不動産所得の赤字、事業所得の赤字など、所得の種類によって扱いが異なります。損失が出たからといって、必ず給与所得や他の利益と相殺できるわけではありません。
投資と税金では、特に上場株式等の譲渡損失と、他の上場株式等の譲渡益や配当所得との関係で損益通算が問題になります。確定申告が必要になる場合もあるため、仕組みを正しく理解しておくことが大切です。
利益だけでなく損失も税金計算に関係する
税金というと、利益が出たときだけを考えがちです。しかし、投資や事業では、利益だけでなく損失も税金計算に影響する場合があります。損益通算は、その損失をどの範囲で税金計算に反映できるかを考える制度です。
たとえば、株式を売却して利益が出た場合、その利益には税金が関係することがあります。一方で、別の株式を売却して損失が出ている場合、その損失を同じ年の利益と相殺できることがあります。これにより、課税対象となる利益が小さくなる場合があります。
ただし、相殺できる範囲には制限があります。上場株式等の譲渡損失は、給与所得や事業所得と自由に通算できるわけではありません。原則として、同じ上場株式等の譲渡益や一定の配当所得など、制度で認められた範囲で確認します。
この点を誤解すると、「投資で損をしたから給与の税金が必ず戻る」と考えてしまうことがあります。しかし、投資の損失と給与所得は、通常そのまま自由に相殺できるものではありません。損益通算は便利な制度ですが、対象と範囲を理解する必要があります。
株式投資でよく出てくる損益通算
損益通算とは何かを考えるとき、最も身近な例の一つが株式投資です。上場株式や投資信託を売却したときに、利益が出ることもあれば損失が出ることもあります。
たとえば、A株の売却で30万円の利益が出て、B株の売却で10万円の損失が出た場合、一定の条件のもとで差し引きし、20万円の利益として税金を計算するイメージです。このように、同じ年の利益と損失を通算することで、実際の投資成績に近い形で課税対象を整理できます。
特定口座を利用している場合、同じ証券会社の同じ特定口座内であれば、証券会社が損益を自動的に計算してくれることがあります。源泉徴収ありの特定口座では、利益が出たときに税金が差し引かれ、後から損失が出ると口座内で税金が調整される場合もあります。
一方で、複数の証券会社を使っている場合、証券会社をまたいだ損益は自動では通算されません。A証券で利益が出て、B証券で損失が出た場合、損益通算をするには確定申告が関係することがあります。
特定口座内で自動的に通算される場合
特定口座を利用している場合、同じ証券会社の同じ特定口座内で発生した上場株式等の売却益と売却損は、証券会社が計算してくれることがあります。これは、投資初心者にとって大きな助けになります。
たとえば、同じ年にA銘柄で利益が出て、B銘柄で損失が出た場合、特定口座内では証券会社がその損益を通算して年間取引報告書にまとめます。源泉徴収ありを選んでいる場合は、利益に対して差し引かれた税金が、損失によって調整されることがあります。
ただし、特定口座内で自動的に通算されるのは、基本的にその証券会社のその口座内の取引です。別の証券会社の口座、一般口座、NISA口座、過去の損失などまですべて自動で反映されるわけではありません。
そのため、複数の証券会社を使っている人は、各社の年間取引報告書を確認する必要があります。口座ごとに利益と損失が分かれている場合、確定申告をすることで通算を検討できる場合があります。
複数口座の損益通算には確定申告が関係する
複数の証券会社で取引している場合、損益通算をするには確定申告が必要になることがあります。これは、証券会社ごとの特定口座では、それぞれの口座内でしか損益が計算されないためです。
たとえば、A証券の源泉徴収あり口座で50万円の利益が出て税金が差し引かれ、B証券の特定口座で30万円の損失が出たとします。この場合、A証券とB証券の損益は自動では合算されません。両方の年間取引報告書を使って確定申告をすることで、損益通算を検討できる場合があります。
ただし、確定申告をすれば必ず有利になるとは限りません。申告することで、所得税や住民税の計算だけでなく、国民健康保険料、扶養判定、配偶者控除、各種給付制度などに影響する場合があります。
特に、扶養に入っている人、国民健康保険に加入している人、退職後の人、自営業者などは注意が必要です。税金が戻る可能性があっても、他の負担や判定に影響する場合があるため、全体で確認することが大切です。
譲渡損失を翌年以降に繰り越せる場合
株式投資で損失が出た場合、損益通算してもなお控除しきれない損失が残ることがあります。このような場合、一定の条件のもとで、譲渡損失を翌年以降に繰り越せる制度が関係することがあります。
たとえば、ある年に上場株式等の売却で大きな損失が出て、その年の他の上場株式等の利益や配当所得と通算しても損失が残る場合、翌年以降の利益と相殺できる可能性があります。これを繰越控除と呼ぶことがあります。
ただし、損失を繰り越すには、確定申告が必要になる場合があります。損失が出た年に申告するだけでなく、その後の年も継続して申告が必要になることがあります。途中で申告を忘れると、繰越控除が使えなくなる可能性もあるため注意が必要です。
また、繰越控除が使えるかどうかは、対象となる取引や口座、申告状況によって変わります。損失が出たから自動的に翌年へ繰り越されるわけではありません。制度の要件と手続きの確認が欠かせません。
配当所得との損益通算
株式投資では、売却損だけでなく配当金も関係します。上場株式等の譲渡損失がある場合、一定の条件のもとで、配当所得との損益通算が関係することがあります。
たとえば、株式の売却で損失が出ている一方、同じ年に上場株式の配当金を受け取っている場合、申告分離課税を選ぶことで、譲渡損失と配当所得を通算できる場合があります。これにより、配当金から源泉徴収された税金の一部が調整される可能性があります。
一方で、配当所得には申告不要、総合課税、申告分離課税といった選択肢が関係する場合があります。総合課税を選ぶと配当控除が関係する場合がありますが、譲渡損失との通算は扱いが異なります。
配当所得を申告するかどうかは、税額だけでなく住民税や社会保険料への影響も考える必要があります。配当金を申告すれば必ず有利、申告しなければ必ず不利というものではありません。売却損と配当金がある場合は、申告方法を慎重に確認しましょう。
NISA口座の損失は通算できない
損益通算で特に注意したいのが、NISA口座の扱いです。NISA口座では、一定の条件のもとで株式や投資信託の売却益、配当金・分配金が非課税になる場合があります。一方で、損失が出た場合の扱いも通常の課税口座とは異なります。
NISA口座で発生した損失は、特定口座や一般口座の利益と損益通算することができません。つまり、NISA口座で損をして、特定口座で利益が出ていても、その損失を使って特定口座の利益を減らすことはできません。
これは、NISA口座の利益が非課税になる代わりに、損失も税務上はなかったものとして扱われるイメージです。非課税のメリットがある一方、損失が出たときに税金計算で使えない点は重要な注意点です。
NISAは投資利益を保証する制度ではありません。価格下落や元本割れのリスクはあります。NISA口座と課税口座では、利益が出たときだけでなく、損失が出たときの扱いも違うことを理解しておきましょう。
事業所得や不動産所得の損益通算との違い
損益通算は、株式投資だけの制度ではありません。所得税では、事業所得や不動産所得の赤字が、一定の条件のもとで他の所得と通算できる場合があります。ただし、株式投資の損益通算とは仕組みや範囲が異なります。
たとえば、個人事業主が事業を行い、売上より必要経費が多くなって赤字になった場合、その事業所得の赤字が給与所得などと通算できる場合があります。ただし、事業としての実態、帳簿、経費の根拠などが重要です。
不動産所得でも赤字が出ることがありますが、すべての赤字が自由に通算できるわけではありません。土地取得に関する借入金利子など、損益通算に制限がある項目もあります。投資用不動産では、税金だけでなく資金繰りや修繕リスクも考える必要があります。
一方、雑所得の赤字は、給与所得などと自由に通算できない場合があります。会社員の副業が雑所得として整理される場合、赤字が出ても給与と相殺できないことがあります。損益通算は所得区分によって扱いが大きく変わるため、区分の確認が重要です。
損益通算でよくある誤解
損益通算とは何かを学ぶときによくある誤解の一つは、「損失なら何でも給与所得と相殺できる」というものです。実際には、株式投資の譲渡損失は、原則として給与所得と自由に通算できません。上場株式等の範囲内での通算や、一定の配当所得との通算を確認する必要があります。
次に、「NISA口座の損失も通算できる」という誤解があります。NISA口座の利益は非課税になる一方で、損失は課税口座の利益と通算できません。NISA口座と特定口座・一般口座の違いは必ず押さえておきましょう。
また、「損失が出たら自動的に翌年へ繰り越される」という考え方も注意が必要です。繰越控除には確定申告などの手続きが関係します。損失が出た年に何もしないままでは、制度を利用できない場合があります。
さらに、「確定申告すれば必ず税金が戻る」という誤解もあります。損益通算や繰越控除によって税額が調整される場合はありますが、申告した内容が住民税や社会保険料、扶養判定に影響する可能性もあります。税額だけでなく全体への影響を確認することが大切です。
制度変更と公式情報の確認が欠かせない
損益通算、株式投資、譲渡損失、確定申告、配当所得、申告分離課税、繰越控除、特定口座、NISA、不動産所得や事業所得の赤字の扱いなどは、制度改正や実務上の扱いによって変わることがあります。過去の情報や個人の体験談だけで判断すると、現在の制度と合わない可能性があります。
また、損益通算の扱いは、所得の種類によって異なります。上場株式、投資信託、外国株式、NISA口座、一般口座、不動産所得、事業所得、雑所得などでは、確認すべき点が変わります。同じ「損失」でも、税金計算で使える範囲は同じではありません。
この記事は、損益通算とは何かを初心者向けに整理した一般的な解説です。個別の損益通算の可否、繰越控除の可否、確定申告の要否、税額、配当所得との通算、住民税や社会保険料への影響を断定するものではありません。実際には、所得区分、口座区分、損益の内容、申告状況、扶養や社会保険の状況によって判断が変わります。
実際の確定申告や税金の確認では、国税庁、税務署、証券会社、自治体、利用している会計ソフトなどの最新情報を確認してください。複数口座を使っている場合、損失の繰越控除を検討する場合、副業や不動産所得の赤字がある場合は、税務署の相談窓口や税理士などに確認することも選択肢です。
まとめ
損益通算とは、一定の範囲で利益と損失を相殺し、税金計算に反映する仕組みです。株式投資では、上場株式等の譲渡益と譲渡損失、一定の配当所得との関係で損益通算が問題になることがあります。
特定口座内では、同じ証券会社の同じ口座内で損益が自動的に通算される場合があります。一方、複数の証券会社を使っている場合や、損失を翌年以降に繰り越したい場合は、確定申告が関係することがあります。
NISA口座の損失は、特定口座や一般口座の利益と損益通算できません。また、事業所得や不動産所得の赤字、雑所得の赤字では、株式投資とは別のルールが関係します。同じ損失でも、所得区分によって扱いが異なります。
制度や実務上の扱いは変更されることがあります。損益通算とは何かという基本を理解したうえで、実際の申告では最新の公式情報を確認し、自分の投資状況や所得区分に合わせて慎重に整理しましょう。